経理財務と法務はなぜ協力が必要なのか
企業が安定して発展していくには、経理財務と法務が協力することがとても大切です。
経理財務は、会社のお金の動きを数字で管理し、経営に必要な情報をまとめます。一方、法務は契約書や法律を確認し、会社にとってリスクになりそうな問題を防ぎます。どちらも、会社の信頼性や安全性を守るために欠かせない役割です。
最近では、環境や社会への責任(ESG)やサステナビリティが注目されており、会社の中でこうした取り組みを支えるためにも、この2つの部門が連携することが求められています。
正確な財務報告のために法務が必要な理由
経理財務が作る財務報告は、会社の活動すべてを数字で表したものです。しかし、その数字の裏には、法律に関わる内容もたくさんあります。
たとえば、実際には存在しない売上を記録すれば、法律違反になることもあります。このようなことを防ぐために、法務が契約書や法律の内容を確認し、経理財務と情報を共有する必要があります。
また、新しい会計ルールや法律ができたとき、法務がいち早くその内容を理解し、経理財務と連携することで、報告の正確さを保つことができます。
資金調達やM&Aに隠れたリスクとは
会社が資金を集めたり、他の会社を買収したりするときには、法的な内容と数字の両方を正しく見る必要があります。
契約書の中には、あとで会社にとって不利になる条件が入っていることもあります。そうした内容を法務がチェックし、経理財務がその影響を計算することで、安心して意思決定ができるのです。
最近では海外の会社と取引することも増え、通貨や法律の違いからくるリスクもあります。法務と経理財務の連携が弱いと、あとでトラブルになり、経営に大きな影響が出る可能性もあります。
内部統制とガバナンスにはチームワークが必要
上場企業では「J-SOX法」というルールにより、会社の中のしくみ(内部統制)をしっかり整える必要があります。
たとえば、誰かが不正をしても気づかないような状態では、投資家の信頼を失ってしまいます。法務はルールを設計し、経理財務はそれを運用する。これが正しく機能してこそ、会社全体のガバナンス(管理体制)がうまく回ります。
また、不正を早めに見つけるためには、法務の制度設計と、経理財務の数字チェックが連動していることが重要です。
契約と会計処理はセットで考える
契約書の内容は、いつどんな費用や収益を計上するかに影響を与えます。たとえば、リース契約の期間や解約ルールによって、会計上の処理方法が変わってきます。
ところが、現場では法務と経理財務がバラバラに動いてしまうこともあります。「契約内容を確認せずに会計処理を進めてしまった」などのミスがあると、大きな修正が必要になることもあるのです。
契約内容をしっかり理解して、それに合わせた会計処理を行う。この一連の流れを法務と経理財務が協力して行うことが、リスクの少ない経営には欠かせません。
海外ビジネスや再建時に求められる連携
海外に子会社があったり、企業の再建(リストラや債務整理など)を行ったりする場面では、法務と経理財務の連携がさらに重要になります。
たとえば、現地の法律に違反して契約を結んでしまうと、突然取引が止まったり、罰金を取られたりすることがあります。そのとき、法務がリスクを確認し、経理財務が数字で備えておくことで、問題を事前に防げます。
また、経営が苦しくなった会社を立て直す場面でも、法務が再建の手続きを主導し、経理財務がその内容を帳簿に反映する必要があります。うまくいけば信頼を回復できますが、連携が取れていないと逆に信頼を失うことにもなります。
デジタルツールで一緒に動く仕組みをつくる
最近では、電子契約やクラウド会計、AIなどのツールを使って、法務と経理財務の情報をすぐに共有できるようになっています。こうしたツールがあれば、お互いの仕事が見えるようになり、ミスや手戻りを減らせます。
たとえば、契約が成立したと同時に、会計上の処理内容が自動で反映される仕組みもあります。こうした仕組みを使えば、法務の判断と経理の判断がリアルタイムで連携でき、スムーズな業務が実現します。
経理財務と法務の間に必要な“共通言語”
法務は契約や法律の専門用語、経理財務は数字や会計基準の言葉を使います。お互いの言葉が違うために、うまく話が通じないことがあります。
しかし、目指しているのはどちらも「会社を守り、成長させること」です。その目的を共有できれば、自然と会話ができるようになります。
たとえば、契約の内容が数字にどう関係するか、逆に数字の変化がどんな法的リスクにつながるかを一緒に考えるような仕組みを作れば、共通言語が生まれてきます。
未来からのアドバイス
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経理財務と法務がしっかり連携していないと、気づかないリスクが増えてしまいます。
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ミスを防ぐだけでなく、成長のチャンスを活かすためにも、協力関係はとても重要です。
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最近では、サステナビリティ報告(ESG)など、新しいテーマにも両部門が関わっています。
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お互いの専門を理解し合うことで、チームとしてもっと強くなることができます。
数字の裏側にある法律の意味、契約の裏側にあるお金の動き――それを理解できる人が、未来の会社を支える存在になります。