経理財務の管理職に本当に必要な力  チームと未来を動かす

経理財務全般

現場をわかっていることが信頼につながる

経理や財務の仕事では、数字をまとめるだけでなく、現場で何が起きているかをよく理解しておくことがとても大切です。現場を知ることで、業務の流れや実務担当者のつまずきやすい点、改善できるポイントが見えてきます。

管理職になると、自分で作業するというよりも、チーム全体を見ながら全体の進行を調整する役割が増えていきます。ただし、自分が手を動かす作業から離れる分、チームとの信頼関係がより重要になります。

私も以前、監査の仕事から経理の現場に入りました。そのときに強く感じたのは、「ルールを知っているだけでは足りない」ということです。チームの人たちがどこで困っているのか、どんなツールに慣れているのか、何がわかりにくいと感じているのか。そういった現場の空気を理解してこそ、よりよいアドバイスや改善提案ができるようになります。

自分でやるのが早い…でもそれでいい?

経理の仕事を長くやっていると、「自分でやったほうが早い」と思ってしまうことがあります。たしかに経験がある分、他の人よりも素早く正確にできるかもしれません。でも、それをずっと続けていると、チームのメンバーが育ちません。

また、管理職が細かい作業に時間を取られてしまうと、本来のマネジメントの役割である「全体を見て問題を発見する」「中長期の改善を進める」といった仕事が後回しになってしまいます。

大事なのは、仕事を任せるときに目的や背景、やり方のポイントをしっかりと伝えること。そして、メンバーが困ったときにはすぐに相談できる環境をつくることです。このバランスが、管理職としてのとても大切な力です。

やることを決めて、やらないことも決める

経理財務の管理職は、プレイヤー(作業者)とマネージャー(管理者)という2つの役割を両立しなければならないことが多いです。そのため、限られた時間の中でどの業務に集中するかを考える必要があります。

たとえば、毎月行うような定型的な作業はできるだけチームに任せ、自分は決算対応や監査対応、外部とのやり取りなど重要性の高い業務に集中する、といった線引きを行うことで、自分のリソースをうまく使うことができます。

また、チームメンバーがどんな作業をしているのかを定期的にチェックする仕組みをつくっておくと、負担の偏りを防げますし、業務改善のきっかけにもなります。

他の部門とつなぐ“通訳”のような役割

経理財務の仕事では、営業や法務、購買、経営陣、外部の監査法人など、さまざまな相手と連携する必要があります。そのときに重要なのが、専門的な用語や内容をわかりやすく伝える「通訳」のような役割です。

たとえば営業の人から「なぜこの経費は通らないの?」と聞かれたときに、ただ「ルールだから」と答えるのではなく、「会社の方針としてどう見ているか」「会計上の処理としてどんな影響があるか」などをやさしく説明することで、お互いの理解が深まり、仕事もスムーズになります。

また、法務やIT部門との連携でも、会計処理がシステムや契約にどう関わっているかを把握し、必要な調整を自ら進められると、部門間の信頼がぐっと高まります。

数字を“伝える言葉”に変える

経理財務の業務では、数字を正確に処理するだけでなく、その数字が意味していることをわかりやすく説明する力が求められます。つまり、「数字を読む力」だけでなく、「数字を説明する力」が大切なのです。

たとえば、売上が前年より減っていたとします。ただその事実を伝えるのではなく、「どの商品が減ったのか」「その原因は何か」「どのくらい影響がありそうか」といった内容まで掘り下げて伝えることで、数字が“ただの結果”ではなく、“これからの判断材料”になります。

こうした力は、社内の意思決定に大きく影響するようになります。経理財務が経営のパートナーとして信頼されるには、このように「数字の先を見る力」と「伝える力」の両方が欠かせません。

チームの雰囲気をつくるのも管理職の仕事

経理の仕事は正確さが求められるため、ミスがあるとチームの雰囲気が悪くなってしまうことがあります。忙しいときほどピリピリしがちですが、そういうときにこそ、管理職のふるまいが重要になります。

たとえば、ミスが起きたときに怒るのではなく、「どうしてミスが起きたのか」「どうすれば防げるのか」を一緒に考える。その姿勢が、メンバーの安心感や信頼感につながります。

また、ふだんからメンバーの仕事を見守り、ちょっとした努力や工夫に気づいて声をかけることも、チームのやる気を引き出す大事なポイントです。管理職は“チームの空気をつくる人”でもあります。

まとめ:チーム全体の力を引き出す視点を持とう

経理財務の管理職は、数字と人の両方を見て、会社をよりよくしていく立場です。自分の仕事だけをこなすのではなく、チーム全体が力を発揮できるようにサポートし、育てていくことが求められます。

そのためには、現場を知り、任せる力をつけ、他部門との橋渡し役になり、数字の背景まで伝える力を育てること。そして、チームの雰囲気をよく保つ工夫を続けること。

このような視点を持つことで、経理財務部門は「数字を出すだけの部門」から「会社の未来を支える部門」へと進化します。


経理財務の管理職は、チームの力を引き出すプロデューサーです。経験と知識に加えて、人を育て、チーム全体を動かす力を持つこと。それがこれからの時代に求められる管理職の姿です。

 

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