会計とファイナンスを学ぶ意味
「会計は経理の仕事」「ファイナンスは投資家向け」と思われがちですが、実はビジネスに関わる人全員にとって重要な知識です。
数字を理解する力は、正しい意思決定をするための基本です。
会計は現在の会社の状態を表し、ファイナンスは将来どう行動すべきかを考えるための道しるべです。
この2つを一緒に学ぶことで、より深くビジネスの仕組みを理解できるようになります。
企業の規模や業種に関係なく、経営判断には会計とファイナンスの知識が求められます。
たとえば、資金調達を検討する際には、過去の会計データをもとに将来のキャッシュフローを予測し、
どの程度のリスクを取るべきかを判断しなければなりません。
このように、数字の背後にある「意味」を読み取る力が、現代のビジネスパーソンには不可欠なのです。
会計は過去の記録だけじゃない
会計と聞くと「数字を記録する作業」と思うかもしれませんが、実際には経営のヒントが詰まった情報源でもあります。
たとえば、どの商品が利益を出しているのか、無駄な支出がどこにあるのかなど、会計データを分析することで会社の改善点が見えてきます。
実際にある製造業の会社では、損益分岐点分析を導入したことで赤字から黒字へ転換しました。
固定費と変動費を見直し、利益を出しやすい商品構成に変えた結果、数年で業績が大きく改善したのです。
さらに、会計情報は社内の意思決定だけでなく、外部との関係でも重要な役割を果たします。
たとえば、銀行から融資を受けるとき、投資家に説明するとき、取引先と新しい契約を交わすとき。
そのすべてにおいて、信頼性の高い会計情報が求められます。
ファイナンスはお金の流れを管理する考え方
ファイナンスという言葉には「投資」や「資金調達」というイメージが強いかもしれませんが、
実は「お金の流れをどう設計するか」を考えることがファイナンスの本質です。
会社の中で「利益は出ているのに資金が足りない」という問題がよく起こります。
これはキャッシュフロー、つまりお金の出入りをコントロールできていないことが原因です。
例えば、あるベンチャー企業が急成長して売上は伸びていたのに資金ショートしてしまったというケースがあります。
このような問題も、ファイナンスの知識があれば未然に防ぐことができます。
ファイナンスの視点を持つことで、日々の意思決定に「お金の流れ」を意識する習慣がつきます。
たとえば、仕入れのタイミング、支払いサイトの調整、在庫管理など、すべてがキャッシュフローに直結します。
収益性だけでなく、資金効率を高める視点を持つことが、企業経営を持続可能にする鍵となります。
会計とファイナンスはセットで使うと強力
会計の知識があっても、将来の投資判断をするにはファイナンスの視点が必要です。
ファイナンスを学んでも、現状分析のためには会計データが欠かせません。
このように、2つの知識は相互に支え合っています。
たとえば、新店舗を出す判断をするとき、今の収益状況(会計)をもとに、
その出店によってどれだけの収益が得られるか(ファイナンス)を計算する必要があります。
実際に飲食チェーンでは、過去の売上データと出店地域のデータを組み合わせることで、出店の成功率を上げることに成功しました。
さらに、M&A(企業買収)や新規プロジェクトへの投資判断にも、会計とファイナンスの両面からの分析が必要です。
財務諸表で対象企業の健康状態を確認し、将来どれくらいのリターンが見込めるかをファイナンスの手法で評価します。
このような一体的な分析が、リスクを最小限に抑えるために不可欠なのです。
数字に強い経営者は信頼される
世界の有名な経営者の多くは、数字に強いことで知られています。
たとえばAppleのティム・クック氏はCFO(最高財務責任者)としての経験があり、
Amazonのジェフ・ベゾス氏もデータに基づいて経営を行うスタイルです。
また、日本ではユニクロを展開する柳井正氏が、売上や在庫の数値を使って経営を徹底管理しています。
このように、数字を使って語れる経営者は、社内外からの信頼を得やすいのです。
数字に強いというのは、単に計算が得意ということではありません。
数字の「意味」や「背景」を読み取り、戦略と結びつける力こそが、本当の“数字力”です。
そのためには、日頃から経営に関わる数字を意識的に見る習慣を持つことが大切です。
大学生でもできる学びのステップ
会計とファイナンスの学びは、難しいイメージがあるかもしれませんが、まずは基本を押さえることが大切です。
最初に学ぶべきは次の3つの書類です。
-
損益計算書(P/L):会社がいくら稼いだかを見る書類
-
貸借対照表(B/S):会社の資産と負債のバランスを表す書類
-
キャッシュフロー計算書(C/F):お金の動きを示す書類
これらを理解することで、会社の全体像がつかめるようになります。
次に、ROE(自己資本利益率)やNPV(正味現在価値)など、ファイナンスの基本的な考え方に触れていきましょう。
授業で習った内容を、実際の企業の決算書で確認してみるのもおすすめです。
「この企業はなぜ利益が出ているのか?」「どこにリスクがあるのか?」と考えてみると、理解が深まります。
さらに、財務三表(P/L、B/S、C/F)を通じて、企業の成長戦略や財務的な課題も読み取る練習をしてみましょう。
YouTubeやビジネス雑誌で紹介されている企業の決算分析を参考にすると、実務とのつながりが感じられて面白いはずです。
まとめ
会計とファイナンスは、これから社会に出る大学生にとっても非常に重要なスキルです。
これらを学ぶことで、就職活動や将来のキャリアにも大きな武器になります。
数字を使って考え、語れるようになると、ビジネスの見え方が変わってきます。
日常のニュースや経済記事を読むときにも、背景の理解が深まり、社会への関心も広がるでしょう。
ぜひ、今のうちから「アカウンティング・ビジョン=数字で未来を描く力」を育ててみてください。